更年期障害の男の日記

そうなるまで むしろに谷口さんの長年の不倫が発覚し、妻が激怒して別居を申し出た。もはや離婚は決定的だった。別居後に妻が弁護士を立て、慰謝料などをめぐって争ったので心労が重なった。しかしこの修羅場も持ち前の精神力で谷口さんは耐え抜いていた。「最終的には僕の責任ですから、かみさんには申しわけなかったと思うけど、僕にとっては再 出発をするいい契機だという思いもあったんだ」この直後、谷口さんは、ある女性との関係でED に直面するのだが、その話の前にもう少し詳しく彼の結婚生活について触れておこう。二十代の半ばに熱烈な恋愛をして結婚した谷口夫妻であるが、徐々に意思の疎通が難しくなり、講が深まっていった。妻がどんどん変化していくのに夫が適応できなかったというのが大筋の理由らしい。

 

 

妻は家事に専念するために結婚当初から専業主婦になった。しかしそれは彼女にとって消極的な選択だった。 「かみさんは一種のコミュニケーション不全。やりたいことがあるんだけど、外に出てやるのが不安だったんだろうね。社会でやっていけないという不安感がずっとあったんだと思う。お 嬢さん育ちだから理想は高いんだけど、人間関係をこつこつ築いたり、細かな仕事をこなしたりする自信はなかったんじゃないかなあ。だから、家事はまったく不向きなのに、仕方なく専 業主婦を選んだから、相当にジレンマがあっただろうね」 人それぞれのED 事情妻はいつでも家でふさぎ込んでいた。欝がひどいときは、家事をいっさいやらなかった。買い物に出掛けても億劫になって、何も買わずに帰ってくることもあった。洗濯物はどっさり溜まり、部屋はちらかり放題だった。

 

 

そして家の中を薄暗くして、谷口さんの帰りをじっと待ち受けていた。 ときどきアルバイトに応募することもあったが、たいがいは面接で断わられた。採用されても、「愛想がない」「仕事が遅い」などの理由で解雇された。そういう妻とは対照的に、谷口さんは苦労人らしい実務家で、コミュニケーション能力にたけていた。二十代後半に会社を輿し、収益を着実に上げていった。遊ぶことにも食欲で、毎晩のように遊び仲間と繁華街に繰り出していた。新婚時代の谷口夫妻は、いつでもいっしょに遊びに行った。引きこもりがちな妻を谷口さんが熱心に誘った。「ふたりで話していると楽しい人だから、こういう良いところをもっと他の人たちに知ってほしいと思った」と谷口さんは言う。

 

 

だが、その思惑に反して妻は仲間と打ち解けられずにつまらなきそうにしているので、だんだんと妻を置いて出掛けるようになった そのうちに子どもが生まれた。しかし子育てによって妻の気持ちが充足することはなく、嫌々ながら子どもの世話をしているのは明らかだった。妻に対して谷口さんは、「僕がこんなにがんばっているんだから、君もがんばれ」「ちゃんとやるべきことをやれ」などと叱りつけるだけで、妻の悩みごとを親身になって聞くことはなか 「かみさんは僕しか話す人がいないからコミュニケーションを取りたかったんだろうけど、僕はそれをほっぽっていたから、そのへんのすれ違いは大きかったね。

 

あとから考えると、「苦しかっただろうな』『可哀想なことをしたな』と思うけど、当時の僕は彼女に対して専制的だった。男は稼がなきゃいけないとがんばってきて、けつこう稼いでいたから天狗になっていたところがあったからね だから、かみさんにん%の役割を押しつけて、副ごなしに厳しいこともけったから、彼久にとってしんどい状況だったと思うよ」 性生活においても夫制問に描が生じた。谷口さんは性欲旺盛だったので、毎晩のように妻にセックスを求めた。しかし妻はもともと淡白なうえに欝状態が長かったので、連日のセックスは苦痛だった。谷口さんはそれに気づかず、性欲を政慢することはなかった。

 

愛情とセックスを切り離せないタイプなので性風俗にはぜんぜん興味が湧かず、支しかその対象は考えられなかった。「それだけ、かみさんがすごく好きだった。したくでしょうがなかった」という。結川その愛情というのは、別件にありがちな支配欲と出向していたのではないだろうか。セ ックス 妻のセックス拒否宣言 妻は三十代半ばに一念発起したらしく、単身で短期間のアメリカ留学をした。帰国後、彼女は少しずつ変わっていった。外に出て人間関係を築くことが刊行にならなくなった。はっきりと自己主張をするようになった。定臓を見つけて、上司から信頼を得るほどがんばった 谷口さんは彼女の変化に驚き、戸惑った。そしてだんだん淋しくなった。彼久を自立させたいと思っていたけど、本当に自立してしまうと、援助する喜びがなくなってしまったんだよ。川復する過杭で僕に依存しなくなり、僕から離れていき、僕の存証感が薄くなっていくのがわかったときに、すごく・半くてね。−ひとりじゃなにもできない哀れな女の ために力になっているという自己満足があったから:::」セックスの場而においても、彼女は意思表示をするようになった 強引に求められれば、断固として「NO !」だった。犬が怒っても動じなかった。ベストケンコー

 

しかも谷口さんに改心する様子がな かったので、とうとう我慢の限界に達したらしく、「もう絶対にしたくない」ときっぱりセッ クス拒存宣言までした。 谷口さんは怒るよりも、しょんぼりと落ち込んだ。なぜなのか理解できなかった。「世の中にはセックスがなくても過ごせる人がいるみたいだけど、まあ、いまならわかるけど、 そのときは信じられなかったね。だから、かみさんの気持ちもさっぱりわからなかった。

 

わかってあげていれば、そうなる前になんとか他の方法を考えついたかもしれないが:::」 妻の拒否宣言以来、谷口さんのほうが畏縮・自粛して、ごくたまに再三一お願いをして応じて もらう以外には性関係を持たなくなった。三十代にしてセックスレスに近い状態になった。 「僕はとにかくセックス好きだから、ほんと苦しかったね。他で済ませる気がないから、余計 にきっかった」 6 男らしさの落し穴 ところが、そうは言うものの、心変わりは早かった。三十歳のとき、仕事を続けながら大学 の夜間部に通い始めたので、若い久性と知り合うチャンスがぐんと広がったからだ。ベストケンコー さっそく谷口さんは同級生の女性に惚れ込み、熱心に口説き落とした。その女性は若かりし 頃の妻にそっくりだった。性的なフラストレーションからも解放され、久方ぶりに疑似青春を 謡歌した谷口さんであったが、意外なところに落し穴が待っていた。 「つきあってみてだんだんわかったんだが、容姿だけじゃなくて悩みなんかも、かみさんに似 ているんだよ。たとえば、コミュニケーション不全、集団の中で自分を出せない、でもふたり で話しているとおもしろい。それから母親との関係も似ていたね。お母さんが美人で頭が良く て、しっかり家事もやる完壁な人


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